友達だから

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これはついに来てしまったんだろうか、私にも春というものが……。 今まで数度連絡先は見知らぬ相手に聞かれたことはあったけど、一応避けてきた。 ……でも、この人にはさっき助けてもらったし、すごく良い人そう。 どうする蓮華。いくべきか、いかざるべきか。連絡先くらい、交換してもきっと悪いことは起こらないはず。逆にこれは新しい一歩を踏み出すいい機会かもしれない。 「大きな声出して、ごめんなさい。あまりそういうこと言われたことなかったもので」 「そうなんだ!」 私の言葉にあからさまに嬉しそうな顔をするその顔に、頬が更に熱を上げる。さっきから上がりっぱなしの体温に、眩暈がしそうになり、小さく深呼吸をして息を整えた。 携帯を取り出して「よろしくお願いします」と伝えると、「あ~、どうしよう」と少し上擦った声が聞こえる。 「え?」 どうしようって。交換しようって言ったのそっちなのに。 疑問に思って首を傾けて彼を見ると、顔が真っ赤に染まっており耳までも色を変えている。 「良かった、言って良かった~」 嬉しそうに笑うその顔に、本当は私も笑みを浮かべるべきだ。浮かべるべきなのに……その言葉と笑顔につきん……と心に何かが刺さったような気持ちになるのはなんでだろう。 これが逆にハートに刺さったということなんだろうか。私と知り合いになることにこんなに喜んでくれる人がいる。高校生の頃は体験できなかった出来事だ。 これは確実に私も前に進んでいるってことだよね。少しは変われてきているってことだよね。 これはきっと、私も嬉しすぎて心に何かが刺さったような気持ちになっただけだ。 きっとそうだ、きっとそう。  
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