友達だから

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「あ、僕。岩田 有紀(いわた ゆうき)って言います。よろしくお願いします」 連絡先を交換した後、満面の笑みで彼は言った。笑うと大人っぽい顔が、幼さを見せる。 可愛らしい人で、仲良くなれそうな気がする。 「……二階堂 蓮華って言います。よろしくお願いします」 大丈夫、前に進めてる。大丈夫。 私よりも頭一個分背の高い岩田さんの顔を見て、精いっぱい笑った。 岩田さんとお知り合いになってから三週間が経ち、毎日連絡を取り合い、岩田さんの人となりも分かってきて、だんだんと打ち解けてきた。 寒いよりは暑い方が好きで、暇さえあればランニングをしているらしい。 だから肌がこんがり焼けているのか、と感心すると「そんなに焼けてるかな? 色黒は嫌い?」と心配そうな返事が返ってきて少し笑ってしまう。 そんなある日、リビングでのんびりしていると、部屋から下りてきた椿から「最近いいことあった?」と声を掛けられた。 「え? なんで?」 ゴロゴロとソファに寝そべっていて油断していた。椿の言葉に、少し背筋がぴりっとする。 長い髪をお団子にして頭の上に結っている椿は今日家から出ないような格好をしている。ふわふわのルームウェアを着て、その髪型は可愛すぎるな……とぼんやり椿を見ながら思っていると、「だって毎日携帯見てはニヤニヤ楽しそうだし、お化粧もあまり手を抜かないで仕事行ってるみたいだし」と返ってきた。 「そうかな? 特に何もないけど」 何もなくはないけど、自分からしたら人に話すほどまでの良いことではない気がする。 ただ最近久しぶりに新しく異性の友達が出来たというだけ。 それだけだ、それが少し楽しいだけ。 「ふ~ん、そうなんだ」と、椿からは特にどうでもよさそうな返事が返ってきた。 椿にはまだ言わないでおこう。少しだけその異性の友達が気になっていることを。 少しだけ、一緒に居たら楽しいことを。……と言っても、一緒に居る時っていうのはバスの中で偶然会った時くらいなんだけどね……。 でも、間違いなく……最初の頃会った時とは別の感情が出てきてることは確かだよね。  
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