夢にまで見た

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「二階堂さん! 遅れてすみません! 待ちました?」 慌てて来てくれたであろう岩田さんは、慌てて話しかけてきた。 身振り手振りで私の様子を窺っている姿に、やはり良い人なんだなぁとぼんやり思う反面、このタイミングで来てほしくなかったと少し眉を寄せてしまう。 「私も、今来たところです」 そう告げると「なあ、蓮華。友達って……」と後ろから困惑した声が聞こえた。 「あ、うん。そう、友達」 どうしようどうしよう! 侑弥くんに岩田さんと会うことを知られてしまった! どうしよう! 内心焦っていたけど、極力冷静に見えるように返事をした。笑って答えると、やっぱり視界に入った侑弥くんの顔は複雑そうな表情を浮かべていた。 「知り合い?」 岩田さんも私と侑弥くんの会話にきょとんとしている。 「友達です。昔からの」 岩田さんにも焦りを見せないように笑顔で話しかけると、「そうなんだ」と少し眉を寄せて笑った。 それっきり誰も何も言わずに、空気がシン……と静まる。さっきまで秋晴れだった天気さえも、今は雲りつつあった。 このままじゃ、変な誤解がうまれちゃう! どうやって、なんて言えばいいんだろう。 気まずい、すごく気まずい。誤解されなければいいんだけど……。 そう思って、ふと気付いた。 さっきから誤解をされたくないと懸命に思っていたけど、私は……。 私は、どちらに誤解されたくないんだろう……。 岩田さん……? 侑弥くん……?  
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