夢にまで見た

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岩田さんに侑弥くんとの関係を誤解されたくないの……? それで岩田さんからもう二度と誘われなくなるのが怖いの? 侑弥くんに岩田さんとの仲を誤解されて、それが……その話が……彰弥くんに伝えられるのが怖いの……? 私は……どっちが、怖いの? 困惑して何も言葉を発せずにいると、「蓮華?」と私の大好きだった人に似ている声が聞こえて、ハッとする。 「あ、ごめん。侑弥くん、そういうわけだからじゃあね」 岩田さんに背中を向けて侑弥くんにそう伝えると、驚き気味に瞳が開かれて悲しそうに眉根を寄せられた。でもその表情も一瞬で、あっという間に笑みを作り「ああ、またな」と何かを飲み込んだかのように詰まった声でそう告げられる。 「うん」 頷いて、次は岩田さんに声をかけた。 「岩田さん、行きましょうか」 侑弥くんとは擦れ違いでカフェの中に入る。 侑弥くんはガラス窓から私を少しの間見て、立ち去ってしまった。 その視線の代わりに、お店の人からの柔らかい「いっらっしゃいませ」という声が聞こえる。心地よいジャズが流れて、甘い匂いが鼻腔をくすぐる。 「知り合いの人、格好いいね」 席に案内され、窓際のテーブルに座り、岩田さんは頬をかきながら口を開いた。 「……そうですね」 どう返事をしていいか分からなくてそう返すと、岩田さんは手に取るように分かりやすく落ち込む。 「もしかして、友達とかそういう感じじゃなくて……元カレだったりする?」 「え?」 「あ、ごめん。別に探りを入れてるわけじゃなくて……! というかこんなこと言われても困るよな! ごめんごめん、今の気にしないで!」 慌てて自分が言ってしまったことを撤回したいみたいに、早口で岩田さんは胸の前で手を振った。
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