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侑弥くんは、私の言葉を聞いた後、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしていた。
「は?なんでコイツが関係あんの?」
「え?だって…。よ、葉子と付き合ってるんでしょ?」
あまり言いたくはないけど……。
私がそう言うと、侑弥くんが「はあぁ?」と間の抜けた声を出す。
そして、小さく溜め息を漏らした。
その溜め息に、一瞬肩を震わせたけど……よく状況が分からない…。
侑弥くんをまっすぐ見れなくて、下を向き、自分の手をジッと見つめた。
「おい、なに嘘ついてんだよ」
侑弥くんのドスの利いた声が聞こえ、その後微かに「ひぃっ」と小さく葉子の声が聞こえた。
「れ、蓮華、冗談よ!冗談!真に受けないでよ!」
「え?嘘なの…?」
「あたしと侑弥くんって、まず無いでしょ~!本気にしないでよー、あはは」
葉子が笑いながら、手をバサバサと振る。
な、なんだぁ…。
嘘かぁ……。
胸の中に溜まっていたモヤモヤがスッとなくなる感覚がした。
「嘘かぁ、良かったぁ」
心底落ち着き、ホッと息を吐いた。
「え?蓮華?」
葉子が心配そうに言葉を小さく漏らしたけど、その声は…ドアを開ける音でかき消された。
ギィッ…―
開いたドアからは…
綺麗な薄い色素の茶髪。
高身長でスラッとした背筋の通った立ち方。
優しく穏やかな笑みを浮かべた顔。
同じ顔を持つ弟がいる…青年。
「皆さん、お久しぶりですね」
同い年にまで使う敬語。
柔らかく、聞きやすい声…。
「しょ、彰弥くん…!!」
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