*+。再会と頭痛。+*

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「あっはは、なんか…照れちゃうね。こんな話してると」 真っ赤になった顔を、蓮華は暑そうに手で扇いでいる。 「…そう…ですね」 何とも言えない感情が、胸の中を渦巻いている。 有り得ない…考えたくない……そんな簡単に認められるわけがないでしょう。 「……蓮華」 「なに?彰弥くん」 もう直接的に聞いた方が……理解できるかもしれません。 『本当は、冗談だよ』と言って欲しい。 『驚かして見たかった』と言って欲しい。 ただの、悪い冗談だと教えて欲しい。 「あの…」 言いかけて、口を噤んだ。 『蓮華は、俺の恋人ですよね?』 聞きたい言葉が出てこない。 冗談だ、と言われて安心したいはずなんですが……。 どうしてでしょう…? 言葉にするのが怖いのと同時に、言葉にされるのが怖い…。 もし、違った返答が返ってきたら、俺はそれを受け入れざるおえない。 「…彰弥くん?大丈夫?さっきから様子が変だよ?」 心配そうに覗き込んでくる蓮華に、軽く首を振った。 聞けば分かるはずなのに…聞けない。 俺は、こんなに臆病な人間だったのか……。 ……もしかしたら今日だけ忘れてるという説もあるかもしれません。 「…蓮華、明日も来ていいですか?」 「明日も来てくれるの!?ありがとう!!嬉しいなぁ、1人は暇なんだよね」 “ありがとう”? 俺は、貴方の恋人なんですから会いに来るのは当たり前でしょう。 なんて、普通だったら言うはずの言葉も、今は出てこない……。 蓮華の中では…当たり前が、当たり前じゃなくなっている。 悲しみを堪えて、蓮華に微笑み、病室を出た。 扉を閉めるまで、蓮華はニコニコと笑って、俺に向かって手を振っていた。 俺を、友人だと思っている笑顔に…ひどく悲しみが溢れた。  
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