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「…彰弥くんが、蓮華の好きなパンも教えてくれたの」
葉子が笑顔で、私にパンを渡してくれた。
「彰弥くんが…?」
なんで、私の行きつけのパン屋さんを知ってて…その中でも私が好きなパンを知っているの…?
いくら彰弥くんが頭が良いからって、そんな能力は無いはずだ。
「蓮華が教えたんじゃないの?」
「…わ、わたし…教えてないよ。椿にも誰にも行きつけのパン屋さんは教えてない…はず」
パンを持つ手が震える。
なんで…彰弥くんは私のことを知ってるの…?
彰弥くんを一瞬怖いと思ってしまった…。
もしかして、私と彰弥くんは…本当に付き合っていたの…?
でも、彰弥くんが私を好きになるはずないし、私も彰弥くんへの好きは、友達としての好きのはずだから…恋仲になるのは…考えられない。
「…分からない」
「蓮華、大丈夫ー?顔色が悪いよ?また寝た方がいいんじゃない?」
ハルちゃんが心配そうに私の顔を覗き込んできた。
「だ、大丈夫」
とは言ったものの…頭がクラクラし出して、何だか気持ち悪い。
「…もうちょっと寝てろよ。疲労もあるみてぇだし」侑弥くんが私にお布団をかけてくれて、私が持っていたパンを袋に戻した。
「ここに入れておくから、腹が減ったら食えばいいだろ」
「うん…、ありがとう…」
優しいなぁ侑弥くん。
つっけんどんだけど、本当に優しい。
うん、そうだよ。
やっぱり彰弥くんと付き合ってるはずがない。
この気持ちに確信を持って言える。
私は、侑弥くんが好き。
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