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高校2年生、6月上旬の放課後の教室。
『もう!蓮華ー!どこに行ったのよー』
椿が蓮華のカバンを持ちながら、溜め息をこぼした。
右手には、椿のカバン。
左手には、蓮華のカバン。
何故か、蓮華のカバンは椿のカバンよりボロボロだった。
『…何かあったんですか?』
転入してきたばかりだったが、だいたいクラスにも慣れ、椿と蓮華とは、幼なじみということもあり、よく行動を共にするようになっていた。
『ああ、彰弥くん。
蓮華がカバンを教室に置いたまま、どこか行っちゃって…。さっきからいないのよ…』と、椿は困惑気味に眉間に皺を寄せていた。
『……俺、探してきましょうか?』
『本当?』と椿は目を輝かせた後、『ありがとう。だったら助かるわ。椿、先生に呼ばれていたの』と安心したように笑った。
『そうですか。では、俺が代わりに蓮華のカバンを持っていますよ』
『ありがとう!
じゃあ、ついでに先に帰っていてって伝えてくれる?
椿、今日携帯忘れちゃって連絡とれなかったのよね』
『分かりました。伝えておきます』
俺がそう答えると、椿はカバンを俺に渡した。
『ありがとう!宜しくねぇー』
ふわふわと動く椿につられ、椿の髪もふわふわと揺らされている。
『はい』
椿に笑いかけ、返事をすると、椿は笑って嬉しそうに教室を出て行った。
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