*+。キオク。+*

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『…彰弥くんって、侑弥くんと違って…優しいよね』 蓮華は下を向き、四つ葉を探しながら言う。 『そうですか?』 俺は否定もせず肯定もせず、とりあえず笑った。 お互い地面を見ながら話しているなんて、変な気分だ。 『…うん、だって…彰弥くんはこうやって一緒に探してくれるし、優しいよ。侑弥くんだったら、何かケチつけてきそう……』 そう言った後、蓮華は『でも…』と小さく付け足した。 感情を押し殺そうとしている蓮華…見ていて辛い。 『……な、なんでだろう。………なんで…っ、わたしっ、侑弥くんなんだろ……』 震えながら話す蓮華。 俺だったら、彼女をこんなに苦しめたりしない。 俺だったら…蓮華の気持ちに気付いて、大事にしてあげられる。 なんで侑弥なんだ…? 『……侑弥くん、椿が好きなんだよね?』 蓮華は、確かめるように俺に聞いてきた。 『はい』 一言返事をすると、蓮華は困ったようにフッと笑う。 『…そっか。応援しないとね。侑弥くん、椿の前では臆病だから』 笑って言う蓮華に罪悪感を感じながらも、俺はまた下を向き、四つ葉を探した。 蓮華は、侑弥が椿を好きだと理解してても、諦められないんだろう。 自分に言い聞かせるように言う蓮華を見て、頑張って欲しいと思った。 『…蓮華、頑張って下さい。俺も頑張りますから』 そう言うと、多分四つ葉探しのことを言ってると思っている蓮華は、『うん!!』と明るく返事をした。 俺が蓮華に近付けられるチャンスは何回あるんだろうか? 蓮華が侑弥に近付けられるチャンスは何回あるんだろうか? 俺も、蓮華には負けません。 頑張ってみせます。  
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