*+。キオク。+*

11/13
前へ
/430ページ
次へ
『どうかしたんですか?』 疑問に思って問いかけると、蓮華は眉を寄せて笑った。 『……ううん。何でもない』 何故だか…少し悲しそうに笑う。 何か気に入らないことをしてしまったのか。 『…俺、気に障ることしてしまいましたか?あるんだったら言って下さい』 『なっ、ない!ないよ!!全然ない!!』 蓮華は、申し訳なさそうに慌てて両手をぶんぶんと振った。 『そうですか…。 では、四つ葉見つけて帰りましょうか』 『うんっ!』 元気よく返事した彼女は、あちらこちらを探し回っている。 こんなに探してもなかなか見つからないものなのか…。 『彰弥くん!彰弥くん!見て見て!』 奥の方で、蓮華が楽しそうに俺の名前を呼ぶ。 『どうしたんですか?』 近付いて、蓮華が指差している方を覗き込むと、蟻の巣があった。 『蟻の巣…?これがどうしたんですか?』 蟻の巣を見つけただけで、彼女はテンションが上がるのか。 よく分からない。 『違うよ!となりとなり!ほら!』 蟻の巣の隣りを見ると、三つ葉が沢山生えているのに加え、四つ葉が2本生えていた。 寄り添って生えている四つ葉を、蓮華は躊躇無く抜いた。 『見つかった!!』 『良かったですね』 嬉しそうに笑う蓮華を見ていると、俺も笑みが漏れてくる。 『うんっ!はい、これ』 蓮華は左手を俺に突き出した。 その手に握られていたのは、2本寄り添って生えていた四つ葉の片割れ。  
/430ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2795人が本棚に入れています
本棚に追加