*+。キオク。+*

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『自分からあげた方がいいのでは?』 大事な友達なら尚更だ。 俺から、蓮華が一生懸命探した四つ葉を渡すって…不自然すぎる。 『……?』蓮華はよく分からなさそうに首を傾げた後、『違うよ、これは彰弥くんのだよ』と言う。 俺の…? どういうことだ? 別に最近、好きな子に振られたわけでもない。 それに元気がないわけでもない。 『蓮華がもらって下さいよ』 『私はいらないよ。 彰弥くんが持っててよ』 蓮華が俺の手を掴み、無理矢理持たしてきた。 このまま落とすのも可哀想だと思い、とりあえず俺が持っておくことにした。 『…幸せを運ぶ四つ葉のクローバー。蓮華は良いことが起きて欲しいと思わないんですか?』 いつも、周りから見られるのは椿だった。 常に蓮華は、物事を悲観的に捉えていた。 悲観的に捉えている蓮華だからこそ、持っていた方が良いのではないのだろうか。 『いらないよ! さっき良いことあったから』 そう言って笑う蓮華に、微かに心が動揺したのは…俺しか知らない。 『彰弥くんっ!手伝ってくれて、ありがとう!』 自分のことをあまり考えず、他人のために一生懸命な蓮華。 彼女の笑顔が誰よりも可愛いと、初めて気付いた。 高校2年生の夏だった。  
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