*+。それを頼りに。+*

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しばらくボーっと窓から外を見ていると、高校生たちが学校に通う姿が見えた。 楽しそうに笑っている女の子たち。 面倒くさそうに欠伸をしている男子生徒。 私にもあんなハキハキとしていた時代があったのか…。 いや、ないね。 あんなキラキラした毎日を送った記憶が……高校1年生の時は皆無だった。 椿の後ろで笑うくらいしか出来ない臆病者の私。 …でも、高校2年生の時、侑弥くんと彰弥くんが同じクラスに転入してきた。 そこから私の毎日は、とても鮮やかに色がついた。 侑弥くんに毎日会うたび、嬉しかった。 でも侑弥くんは、椿が好きだから…私はそれを見てることしか出来なくて…苦しかった…。 好きなのに……好きな人が別の人を見ている。 それが、とても……苦しかった。 だけど…傍に居られれば、それで充分だと思えた。 とても叶いそうにない話。 高校3年生になったら……あれ? 侑弥くんとあまり話していないような記憶が…。 いや、話したか。 あれ…? 思い出せない…? 私、高校3年生の時……ほとんどどうしていたんだろう? 『蓮華…』 頭の端っこで誰かが私の名前を呼ぶ。 でも、顔が分からない。 黒い影のシルエットだけで…顔が分からないよ。 「れーんげっ、起きたー?」 ガラッと扉が開く音が聞こえ、振り向いたら椿がいた。 「椿…おはよう」 「なぁに?元気なくない?」 「そうかな? ……何か、心にぽっかり穴が空いた感じがしてたんだ」 「なにそれ?」 「私も分からない」 ……うーん、よく分からないけど……何かを忘れてる気がする。 何か、大切なことを…―  
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