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「あ、あたしのこと…覚えてないわけ?」
「うん、覚えてない」
前川さんが声を震わせ、怒りを抑えたような声を出すが、侑弥くんは気にせずあっさりと返事をした。
「……っ……!」
前川さんは堪えていたのか、さっきまで出ていなかった涙を目に溢れさせている。
「え?」
侑弥くんは目をまん丸くさせて、明らかにワケの分からないという顔をした。
「……信じられない!」
前川さんはそう一言投げ捨て、病室を出て行った。
「前川さん…!」
え?侑弥くんの元カノ…?だったりするの……?
侑弥くんって、彼女いたっけ…?
「なんだ?今の誰?」
侑弥くんが私の方にやってきて、首を傾げながら聞いてきた。
「この前友達になった子」
私がそう伝えると、「ふーん」と侑弥くんは興味なさそうに言う。
あれ…侑弥くんの元カノだったら、侑弥くんが忘れるはずないよね…。
だとしたら……
彰弥くんがいるであろう場所を見ると、彰弥くんは既に病室のドアに向かって走っていた。
バタンと…彰弥くんが病室の扉を閉めた音が聞こえる。
「……修羅場みたいだな」
ここまであまり言葉を発しなかった望月さんが呟く。
確かに…。
「……もしかして、この前話してた時の人たちじゃないかな?」
沢木さんがそう言うと、この前のメンバーは「ああ、そういえば…」とみんな呟いている。
この前の前川さんの話って……もしかして……。
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