*+。それを頼りに。+*

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――彰弥side―― 「前川さん…! 待って下さい!」 蓮華の病室を出ると、前川さんの姿はもう既にいない。 病室内を歩いている……ことはないはずだ。 外に出てみよう…。 と思い、外に出たら案の定前川さんの姿は簡単に見つけられた。 少し遠くにいる前川さんは、立ちすくんでいるように見えた。 「前川さん…!!」 彼女に声が聞こえるように精一杯大きな声を出して呼んでみた。 聞こえたのか、彼女は肩をビクッと揺らし、俺がいる方向とは別方向に走り出した。 こうなったら、俺も走るしかない。 俺も出来るだけの力を込めて、地を蹴った。 「前川さん…!待って下さい!前川さん!」 追いかけながら、彼女の名前を呼んでも全く振り向かない。 それどころか、さっきよりスピードを上げてる気がする。 ……なんで止まってくれないんだ。 俺は…あの時のこと、話したい。 「…前川さん!!」 彼女の腕をグイッと引っ張り、掴んだ。 「きゃっ…!」 小さな可愛らしい声が聞こえ、彼女は走るのを止めた。 というよりも、俺に腕を掴まれたから走れなくなった。 「…やっと、掴まえた」 掴んだ前川さんの手は……とても熱かった。  
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