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彼女は、俺のどこを好きになったんだろうか。
見た目?声?性格?
…もう、聞くことさえ出来ない。
彼女の怒りを煽るだけだ。
彼女が怒るのも当たり前なことだと思う。
勇気を出して告白した相手に、騙されたのだから。
「あの時、色々と前川さんを傷付けてしまい、すみません…。本当に…っ、すみませんでした…!!」
彼女から手を離し、頭を下げた。
言い訳がましいことは出来ない。
人を傷付けてしまったことに違いないのだから。
「……ふざけないで。
それで済むわけないでしょ?
あたしは…今も…っ…。
……傷ついてるんだから」
スンッ…と鼻をすする音が聞こえる。
涙を拭う音も聞こえてくる。
……本当に……申し訳ないことを……俺はしてしまった。
今でも、彼女の心の中に辛いものとして残っている。
それも、きっと鮮明に。
「……すみません」
不甲斐ない自分に、眉が歪んでしまう。
このような方法でしか謝れない自分が酷く腹立たしい。
「…なんでこんな風に会っちゃうかな?信じらんない…っ」
彼女はそう言って、俺の前から去ってしまった。
彼女がいなくなっても、俺は頭を下げたままにした。
こんな自分が悔しくて、腹立たしくて…仕方ない。
前川さんの悲しそうに歪んだ顔が……頭から離れない。
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