*+。それを頼りに。+*

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――蓮華side―― 侑弥くんが紡ぐ言葉は、いつもより全然小さくて…いつもハキハキしている彼からは考えられないほど、申し訳なさそうにしていた。 すべて聞いた後、私は何も言えなかった。 安易に言葉を出せなかった。 もちろん、前川さんから見たら辛かっただろうし、騙されたと思うのは当然だと思う。 引きずるのも分かる。 でも…、侑弥くんや彰弥くんも充分傷ついたんだろう。 自分たちにしか分からない不安や苦しみ。 誰にも理解してもらえない2人。 自分のことを好きになった彼女なら、自分と侑弥くんの見分けぐらいつくだろう…と。 彰弥くんは前川さんのこと、信じていたかったんだ。 好きだから、彼女を信じたいと思ったんだ…。 「……じゃあ、前川さんだけじゃなくて、侑弥くんも彰弥くんも…3人共、傷ついたんだね」 「…ああ。 ……まだ俺はいいとしても、彰弥にとっては…かなりショックだったと思う。 好きなのに、自分を分かってもらえなかったんだからな」 「……うん、そうだよね」 良い言葉が見つからない。 もっと明るい言葉をかけてあげたいのに、何も便利な言葉が出てこなかった。 ただ、前川さんが2人の気持ちを理解してくれたら…ちょっとは違ったかもしれない。 3人共、こんなに心に傷を負わなくて済んだのかもしれない。 「…私から、前川さんに2人の気持ち話してみようか?」 前川さんとは大して仲良くもないけれど、しょんぼりしている侑弥くんを見ていられなかった。  
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