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「おい、長沼ぁ!いい加減吐いたらどうなんだ!てめぇの家から物証は出てんだよ!言い逃れは出来ねぇんだ!とっとと吐いちまえ!」
とある一室にて、連続殺人犯への苛烈な取り調べが行われていた。
容疑者である長沼喜一は頑なに喋らない、のではなく魂が抜けたように呆けてしまっている。
その様子にまだ経験の浅い刑事は苛立ちを隠せないでいた。
「まぁ、落ち着け宮川」
「藤井さん、けどこいつの態度は俺達のことをなめてるとかしか――…」
若い宮川は先輩の藤井に諫められても納得が行かず、反論しようと口を開いたが、藤井の有無を言わさない力の籠った目に已む無く引き下がった。
「……なぁ、長沼。あれはお前一人でやったのか?何か言いたいことがあるんじゃないのか?」
藤井は長沼の口が微かに閉じたり開いたりしていることに気付いた。
無意識なのかどうかは分からないが、何か伝えようとしているのではないか。
長年の経験がそう告げていた。
藤井の言葉に宮川も黙って長沼の様子を注視した。
俄に訪れる静寂、その静寂を破ったのはか細い訴えだった。
「…――が……に……、…鬼……る、小鬼に……殺される」
「小鬼?殺される?それは一体……」
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