桜色の時間を、…君と。

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「 カニさんもあります 」 そう言って俺の皿に乗せたものは、確かにカニと言われれば、カニに見えなくもないのだが…、 味は全然大した事はないものの、初めて見るこの可笑しなものに、俺は思わず口の端を上げた。 ふと彼女を見れば、正座していて膝にはハンカチを置いている。 その隙間から、チラッと大きな絆創膏が見えた。 「……膝、痛いんじゃないのか。構わないから足を崩せ 」 あり得ない気遣いを見せた俺に、彼女は躊躇っていたようだが、やはり痛かったのだろう、では失礼します、と腰をずらして横座りになった。 向こうに足を投げ出した分、ほんの少しだけ距離が縮まる。 俺はさりげなく身体を動かし、更に微妙に距離を縮めた。
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