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けれど… 個人的には、シンさんのその "許せねえもんは許せねえ" のイズムは、 …素晴らしかったと思う。 綺麗事ではなく本当の意味で ファンと向き合う事とは どういう事なのかを 教えられた気がした。 その当時スタッフ兼 アーティストの卵として 勉強のため一緒にツアーを 回っていた私は その終演後 明らかに落ちているシンさんに、 何も声をかける事が 出来なかった。 翌日も事務所で一緒になったけれど、いつも通りに接する事しか 私には出来なかった。 これは後から シンさんから聞いた話。 …そのライブの翌日に 美夏さんはわざわざ 東京にいるシンさんのホテルまで 飛行機で駆け付けてくれたらしく 2人は車で海に出かけたそう。 そこで二人 何を話す訳でもなく 昨日のライブの出来事に 触れる訳でもなく 波の音、鳥の声、砂の擦れる音、 車の通る音、 決して消える事のない音を 感じながら、 ただ黙って お互いがお互いの傍に居た。 そして… 帰り際にただ一言、 美夏さんが発した言葉に 救われたと、 シンさんが後日飲みながら 私に話してくれた。
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