***chapter1***R

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『…そう、生ラーメン札幌の友達が送ってくれたんですよね。 1人じゃ何食も食べきれないから 人が来たときに食べようと思ってたんです。』 「へぇ。塩か。 良いじゃん、俺ラーメン 塩派じゃけぇ。」 『ですよね!私も塩が1番 さっぱりして好きなんです。 飲んだ後には 持ってこいですよね。』 そんな話をしながら生ラーメンを 冷蔵庫から取り出し封を切る。 シンさんは雑誌が飽きたのか、 部屋の隅に立てかけてある 私のフェンダーのアコギを 勝手に弾き始める。 時間が時間だから少し控えめに。 ♪~ 誰の歌か分からない鼻歌だから、 おそらく即興演奏。 小音ながらも心地良いメロディー が私の耳元までたどり着く。 いや、この耳がその声を 無意識のうちに探し出す。 たぶんCM7から始まるバラード系。 彼の唄いだすメロディーラインは 私の中に無い部品が 取り揃えられていて、 何故だか心揺すられる 気持ちになる。 同じコードを弾いても、 自分なら違うメロディーと 違う歌詞が思い浮かぶ。 この日の、この時間、 この場所に産まれた音楽も そうだった。 職業柄か、 人の導きだしたコード進行なのに メロディーと歌詞を付けたくて たまらなかった。
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