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その日のシンさんは、
なんだか変だった。
いつもと飲む量も
言葉遣いも話す話題も
ほとんど変わらなかったから、
これはただの勘なんだけど。
『~シンさん、きょう
ペースだいぶ
はやくないですか!?』
「お前だって
人の事言えんじゃろうが。」
焼酎のグラスを傾けながら
アルコールを体内に注ぎ込む
彼に言った。
いつものことだけど
シンさんは呑んでいるときと
仕事以外のときは特に、
地元の訛りが全開になる。
飲み始めて2時間なのに
シンさんビールジョッキ3杯、
ワイン2杯、
焼酎ロック3杯いってる。
…これで健康診断毎年問題ないってどんな体してんの。
年齢の割に肝臓強すぎる。
『私まだビール3杯と
ワイン1杯くらいですよ。』
「俺は、今日は飲みたいんじゃ。
たまにはお前も
潰れるくらい飲め。」
『女が潰れるなんて
みっともないじゃないですか。
それに二人とも潰れて
誰がシンさんを家まで
送り届けるんですか。』
「お前、女だったんか!
それは初知りや!」
笑いながら彼が言った。
人をからかうのが趣味のこの人は
こうやって気にさわる事も
たまに言うけど
嫌みな感じは全然なくて。
多分、相手の反応をみて楽しみたいんだろうな。
と思うから少しイラッとしつつ
睨みをきかせて低い声で
私はそれに対抗した。
『シンさん…。』
「じょーだん、じょーだん。
お前はかわいい、おれの弟分や!
さあ飲めー!!」
弟かい!…まぁなんでもいいや。
この際、性別なんて関係ない。
今はこんなんでも
仕事になると尊敬出来る
この人だから、
ちょっとくらい面倒臭かろうが
シンさんと飲みに行ける事が
私は楽しかった。
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