せのび。

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ふと日誌から視線を上げれば、柏木君はもう仕事を終えていたようだった。 黒板の前に現れた柏木君の友達と、もうお喋りを始めている。 時折おおげさなジェスチャーをしては爆笑するところなんて男の子そのものって感じだ。 いきいきとした顔で話をする彼に、目が離せない。 そのとき、一瞬だけ目が合って、心臓の音が全身を駆け巡った。 ぱっと視線を逸らしてしまう私は、柏木君にどう映っただろう。 気づかれちゃったのか、はたまた嫌いだと思われちゃったのか。 「わ、美依シカトー?」 「ごっ、ごめん」 笑いながら話し掛けてくる柏木君に、どくどくと心臓の音。 「うわー、俺傷ついたー。 美依は友達だと思ってたのに」 「嫌われてんじゃね?」 「まじかよー?」 「嫌いじゃないってば。 ごめんって」 「はいはい、知ってる」 フッと緩んだ柏木君の口元にときめいて、ちょっと悔しい気持ちになった。
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