せのび。

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「っていうかさ、美依日誌進んだの?」 「え? いや……その」 思いがけない質問に思考が固まる。 ……やばい、柏木君の気配を感じて全然進んでなかった。 開いただけの日誌を、柏木君が覗き込む。 「わ、まだ全然じゃん」 「時間割忘れちゃって」 さらりと目の前で揺れる柏木君の前髪が、ほんのりとシャンプーの香りを運んだ。 「ははっ、美依って案外ヌケてんのな」 「違うよー」 笑いながら顔を上げれば、至近距離に柏木君の顔。 じっと見つめていたら、ぱちりと目があって微妙な沈黙が生まれた。 「……」 「……」 見つめ合ったまま数秒、私達の動きは固まっていたと思う。
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