せのび。

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柏木くんはあれから私の顔を一向に見ようとしてくれなかった。 「美依ちゃん、マジでごめん」 「……別にいいよ」 未だに頭を下げ続ける原田くんに小さく笑いかけると、サンキューと笑顔が返ってきた。 「じゃあ、席戻るわ」 「うん」 時計を見れば、もうそろそろで授業が始まる時間。 予鈴がなって席に着くとき、ちらりと見た柏木くんは、隣の席の女の子と楽しそうに談笑中だった。 「はーい、じゃあ授業始めるぞー」 どこか遠く感じる先生の声。 耳に届くのはどうしてか柏木くんの声ばかりで。 ちくりと痛む胸に、また後悔。 さっきはパチリと合った目が今度は合わなくて、それがただ悲しくて仕方なかった。
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