せのび。

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「うん……」 にこっと笑って頭を撫でてくれる桃華に、ほんの少し胸の奥が暖かくなった。 「そーだよね。 それに、柏木君に『ナイ』なんて言わせないくらい、可愛くなればいいもん」 「そーそー、生意気言えないくらい可愛くなっちゃいな」 バシッと叩かれた肩に、気合いが入る。 「うんっ。 ありがとーっ!」 もう、『ナイ』なんて言わせないもん。 まだ少しチクリと痛む胸に気づかないふりをして、私は前を向いた。 「ねぇ、桃華っ! 今日からちょっと乙女になるから特訓つきあってよ!」 「お、いいよー。 美依やる気だねー?」 「もちろん!」 窓から入ってきた風は、私の背中を後押しするよう。 ちょっと嬉しくなって、予鈴のチャイムがなったことにも、全然気づかなかった。 「やっば、授業はじまるっ!」 ダッシュで席につく私の心は、それでも軽やかなものだった。
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