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「おおお……この女、やはり!」
オアムの動揺と言葉は、途中でぷつりと途切れた。
フィオの頭が、がくん、と空を向く。
長い赤の髪が垂れ下がり、オアムの指先をくすぐる。間近でフィオを見ていたオアムは、我が目を疑うこととなった。
――フィオの胸から、氷が噴き出してくる。
それは瞬きするより速い速度で槍を絡めとると、勢いそのままにフィオの全身に襲いかかっていく!
氷だ。氷が、這う。
血の代わりに白濁した氷がフィオを余すところ無く包み込み、頭の先から足のつま先までをすっぽりと氷の中へ閉じ込めてしまった。
「同じだ――あの洞窟と、同じ……!」
エイダの傍らに立つアーヴが、腰を抜かして見上げながら怯えた声で言った。
――何か悪い夢でも見ているようだった。
フィオから発生した氷は留まることを知らずに、フィオの身体のみでは飽き足らずにオアムの指にまで這い寄っていく。
「な……! なんぞこれは! やめろ、やめるんだ!」
気付いた時にはもう遅い。
氷は素早くオアムの手を凍らせると、そのまま手首、腕、肩と次々に凍らせた。
オアムは情けない悲鳴をあげながら、必死の形相で氷を取り除こうと凍った腕に爪を立てたり、フィオを投げ捨てようとする。だがそれのどれも叶わず、時が経てば経つほど、蛇女の氷像が出来上がっていく。
辺りにはオアムの氷漬けにされる恐怖からの絶叫と、パキパキと空気をも凍らせる冷えた音だけが響いた。
「寒い、さむい、ああ、わたしの腕がぁぁ!」
冷たさに感覚は麻痺し、神経をナイフで削り取られていくような激痛が全身を暴れ回る。
オアムは気が狂いそうになるほどの痛みにのたうち回り、四本の蛇の胴体をめちゃくちゃに振り回した。
「痛いぃぃ、おい! フィティスぅ! 見ておるのだろ、もう充分じゃないかや! 助けたもれ、フィティス!」
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