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――オアムとの戦闘から、一週間後。
「あ、ねえ。ちょっと君」
アーヴは妖精王の城で、中庭にたむろしていた暇そうな妖精に声をかけた。
「あれぇ、アーヴだ」
「ホントだー。アイツの看病もういいの?」
花の蜜を吸っていた妖精達は、わらわらとアーヴに寄ってくる。ゆったりとした部屋着に白いガウンのようなものを羽織ったアーヴは、うっすら疲れを滲ませた顔で微笑した。
「うん。今、目を覚ましたから。リュヌス王に知らせてほしいんだ」
――あれから、エイダは極限まで傷ついた心と身体を休めるように昏々と眠り続けた。
彼が元エデンの住人、つまり神であったことは、城に返ってからリュヌス王より伝えられた。その事実に驚きもしたが、どこか人間離れした飄々なる空気の出所が分かった気がして、妙に納得してしまった。
アルフィークに辿り着くまでの話は、一晩寝てすっきりとしたジークに聞いた。
あのオアムに一撃も与えられなかったのがよっぽど悔しかったのか、常時むっすりとしていたので聞き出すのに苦労した。
その話を聞いてからますます、アーヴは自分がしたことの愚かさを痛感したのだ。
我が身可愛さにフィオを差し出したこと。あの時はアルフィークの為を思って言ったような様子だったが、結局自分が助かりたかっただけだったのだ。
だから、自らエイダの看病を申し出た。
事情を聞いたリュヌス王は快諾してくれた。元より竜のジークに看病などという繊細な仕事も頼めないし、どのみちアーヴがすることになっただろうが。
エイダの眠る部屋に戻ると、女エルフの一人が枕元の花を替えているところだった。もっともこの花は眠るエイダの為というより、四六時中看病にあたるアーヴを慰める為のものだろう。
「ありがとう。お前も下がっておやすみ」
昨晩からつきっきりでいてくれたことに礼を述べると、女エルフは少し驚いたように目を見開いた。
「まあ。アーヴ様が素直にお礼などと、珍しいこともあるものですね」
「うるさいな。たまにはボクもそんなことを言うんだよ」
指摘されたくなかったところを突かれて、若干白い頬に朱が射し込む。
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