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しっしっと犬を追い払うように女エルフに手を振って、アーヴはエイダのベッドから離れた、窓のすぐ近くの椅子に腰掛けた。
窓の下に設置された小さなテーブルの上に置いてある、愛用の長いキセルを手に取る。慣れた手つきでタバコを詰め、火をつけて煙を吸い込んだ。
思い切り肺に煙を落とし込むと、葉の香ばしいにおいが鼻腔を満たした。毛穴がぶわりと広がるようなくすぐったい感覚が脳に刺激的で、寝不足で怠い身体がいくばくか目覚める。
ふぅーっ、と長めに息を吐けば、ほとんど透明になった白い煙が窓から外に逃げていった。タバコは高級な嗜好品、エルフの中でも好んで吸うのはアーヴくらいなものであった。
その煙の逃げる先を目で追いかけながら、ぼんやりと考え事をしていると。
「……アーヴ、さん……」
ほとんど気のせいのような小さい小さい声。しかしそれをエルフの特徴である鋭い聴覚で聞き取ると、カンと小気味良い音を立たせてキセルを窓枠に叩き付け、灰を窓から下に落とす。
「……灰、マナー違反ですよ……」
「下は砂を敷き詰めてあるからへーき」
アーヴの言通り、この部屋――つまりアーヴ専用の客間だが、タバコを嗜む彼のために窓の下は特別に砂が敷き詰めてある。リュヌス王に黙って改造したが、まあこれくらいで怒る御仁ではないので特に気にも留めていない。
(それよりまぁ、起きて第一声がそれかい)
キセルを拭きながら、いっそ感心して言葉にはしない突っ込みを入れる。
すっかりショックでしょげているかと思いきや、案外しっかりしているようだ。アーヴはそこだけ感心しながら、キセルをテーブルに置いてベッドの枕元に歩み寄った。
「よく寝てたね。もう一週間だよ。水飲む?」
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