プロローグ

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 4月25日。  僕が部屋の扉を開けるとヒトが倒れていた。  と言ってもヒトかどうかも疑わしい。  何故なら、長い髪が体の輪郭を隠す程無造作に伸びているからだ。  見た目だけ見るとどう見ても昆布の化け物。 『ヒト』だと判断したのも、長い布のようになった髪から肌色の四肢がはみ出ていたからであり、見た目はもはや呪われた日本人形の末路みたいな感じだった。 (脈と測って助かるようなら救急車。助からなさそうなら+αで警察か)  しゃがみ込んでそっと手首に触れる。  ひんやり冷たい。この時点で死亡確定だが、更にその後押しをするように脈がないという事実がのしかかる。  初めて会った住人が、死んでるなんて幸先が悪いなんてもんじゃない。  『部屋で死んだ人がいるアパート』なんて物件としては最悪の評価だ。  しかも、そんな劣悪な物件を僕が管理することになっているのだ。  全く、あのジイさん。厄介な物件(モン)押しつけやがって。 「仕方ない。警察に電話す……」  携帯を取り出し、電話しようとした瞬間。  ――僕の足首を何かが掴んだ。
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