一章 ~選択~

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   ぶんと唸りを立て、冴島の左ハイキックが憂木の側頭部に襲いかかった。  来た。  憂木は上半身を屈めそれをかわすと、左足で地を蹴った。  冴島の懐へ飛び込む。  右足を一歩踏み込んだその先にあったのは、そこまでの流れを既に読みきり、体制を戻した冴島の、カウンターの掌底だった。  冴島の右腕から、打ち抜くように振り下ろされた掌底。  憂木は、踏み出した右脚をバネにして、一気に上体を反らした。  冴島の掌が、憂木の鼻先を掠め、空を切る。  振り下ろされたその手首を、憂木は両手でしっかと掴んだ。  ボックの口笛と、ちぃっという冴島の舌打ちがほぼ同時に聞こえる。  憂木が、掴んだ手を軸にして、地面を蹴り上げた。  全体重を冴島の右腕に預けたまま、その腕を引き込んで、マットへと転がる。  飛びつき逆十字固め。  憂木の、そして冴島の身体が一回転し、その体制が極まった。  否、冴島の予想以上の体重が、わずかに憂木の体制を狂わせた。  肘のポイントが、ほんの少し外側に逸れている。  この野郎、絶対に折ってやる。  憂木は、グリップした手に力を込め、一気に冴島の肘を伸ばしにかかった。  腰を浮かせ、その腕を極めにかかった瞬間、憂木は体験したことのない激痛に襲われた。  
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