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ぶんと唸りを立て、冴島の左ハイキックが憂木の側頭部に襲いかかった。
来た。
憂木は上半身を屈めそれをかわすと、左足で地を蹴った。
冴島の懐へ飛び込む。
右足を一歩踏み込んだその先にあったのは、そこまでの流れを既に読みきり、体制を戻した冴島の、カウンターの掌底だった。
冴島の右腕から、打ち抜くように振り下ろされた掌底。
憂木は、踏み出した右脚をバネにして、一気に上体を反らした。
冴島の掌が、憂木の鼻先を掠め、空を切る。
振り下ろされたその手首を、憂木は両手でしっかと掴んだ。
ボックの口笛と、ちぃっという冴島の舌打ちがほぼ同時に聞こえる。
憂木が、掴んだ手を軸にして、地面を蹴り上げた。
全体重を冴島の右腕に預けたまま、その腕を引き込んで、マットへと転がる。
飛びつき逆十字固め。
憂木の、そして冴島の身体が一回転し、その体制が極まった。
否、冴島の予想以上の体重が、わずかに憂木の体制を狂わせた。
肘のポイントが、ほんの少し外側に逸れている。
この野郎、絶対に折ってやる。
憂木は、グリップした手に力を込め、一気に冴島の肘を伸ばしにかかった。
腰を浮かせ、その腕を極めにかかった瞬間、憂木は体験したことのない激痛に襲われた。
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