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冴島の足首が、不自然な方向に曲げられた状態で、憂木の腕に抱え込まれている。
冴島は悲鳴に近い雄叫びを上げながら、踵を憂木の顔面に何度も振り下ろす。
虚ろな眼をした憂木の顔は、冴島の蹴りとも呼べない蹴りで、みるみる腫れ上がっていく。
瞼を切り、唇を切り、頬から出血しても、憂木はそれを避けることはしなかった。
既に、避ける事など意識の外に飛んでしまっている。
俺は、何をしている?
俺は、何を抱え込んでいる?
そうだ。
こいつは、冴島の足だ。
俺は、冴島に二度もやられた。
二度も。
くそ。
冴島を、殺してやりたい。
こいつに、勝ちたい。
こいつに、どうやったら、勝てる。
……ちょうど、こいつの、足が、ある、じゃないか。
ここを、こう、したら、かんたんに、こわせるんだ
こう、やって、ちから を いれ ば
……
……ほら。
ばりっ。
固い皮を木の幹から剥ぎ取る様な、嫌な音がした。
殆ど意識の無い憂木にその音が聞こえるはずもなく、しかし冴島の足首を破壊した右腕の力が解かれることもなかった。
憂木は満足げな表情を浮かべたまま、気を失っていた。
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