一章 ~選択~

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   冴島の足首が、不自然な方向に曲げられた状態で、憂木の腕に抱え込まれている。  冴島は悲鳴に近い雄叫びを上げながら、踵を憂木の顔面に何度も振り下ろす。  虚ろな眼をした憂木の顔は、冴島の蹴りとも呼べない蹴りで、みるみる腫れ上がっていく。  瞼を切り、唇を切り、頬から出血しても、憂木はそれを避けることはしなかった。  既に、避ける事など意識の外に飛んでしまっている。  俺は、何をしている?  俺は、何を抱え込んでいる?  そうだ。  こいつは、冴島の足だ。  俺は、冴島に二度もやられた。  二度も。  くそ。  冴島を、殺してやりたい。  こいつに、勝ちたい。  こいつに、どうやったら、勝てる。  ……ちょうど、こいつの、足が、ある、じゃないか。  ここを、こう、したら、かんたんに、こわせるんだ  こう、やって、ちから を いれ ば   ……  ……ほら。  ばりっ。  固い皮を木の幹から剥ぎ取る様な、嫌な音がした。  殆ど意識の無い憂木にその音が聞こえるはずもなく、しかし冴島の足首を破壊した右腕の力が解かれることもなかった。  憂木は満足げな表情を浮かべたまま、気を失っていた。  
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