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「好きったってよ、ファンでいりゃ良かったものを……何でそれを職業に選んだんだ?
お前さん、大学からアマレスの引き合いが凄かったらしいじゃねえか。
オリンピックも間違いねえ、メダルにも手が届くってぇ言われてた逸材がょ」
「レッレスリングは…」
明神は、自分の声が少し大きくなったのに驚くと、トーンを落とし言い直した。
「レスリングをやってたのは……プロレスラーになるためでした」
国原の、右の眉と唇が少し吊り上がった。
「俺、昔っから強くなりたくて……虐められてたんです。だから、プロレスラーに憧れて……」
「んで、夢は叶ったって?」
「いっ、いや……」
「だよな。お前さん、ココが弱すぎだもんな」
そう言って、国原は自分の左胸を指した。
「道場じゃ格下扱い、リングに上がりゃファンに野次られる。ショウシン武士ってな」
明神は再び縮こまる。
「自信持てや。俺のスパーに付いてこれるのは、もうJWAには居ねえんだぜ。俺がお前さんを引き連れて、冴島んトコに行っちまったからな」
「でっでも俺、国原さんにタップさせた事、ないですから……」
国原は大きな笑い声を上げた。
「馬鹿野郎、そう簡単に取らせるかよ。だけどな、お前さんかなりいい線行ってるぜ。俺もさすがにヤバいって思うコト、何回もあったからな」
「ホントですか」
「ああ。今だから言うけどな。もうちょい磨きゃあ、もうシュートでお前さんに勝てるヤツは居ねぇよ」
明神の顔が綻んだ。
「じゃあ……憂木さんにも勝てますかね」
「当たり前だ。アイツを死ぬほど可愛がってやった俺が言うんだから、間違いねえよ。
アイツがどんだけ、ボック先生に鍛え上げられてるかは知らんがな」
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