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道場に隣り合わせた八畳間に、二人は稽古着のまま寝転び、共に天井を見ていた。
「もう、一カ月だな」
「ええ」
「オマエ、よく飽きないな」
「……稽古ですか?」
「馬鹿。ここに籠もりっきりなのがだよ」
「いや、全然。別に行きたい所もないし、外はマスコミも煩そうだし」
夏目は傍らの憂木をちらと見やり、言葉を続ける。
「まあ、な。オマエ、注目されてるもんな」
「恵一さんだって…」
「いいよ。気ぃ遣わなくて。
新団体の噂で、冴島さんの次に出てくるのはオマエの名前ばっかりだしな。
俺はその他大勢で十分。その方が気楽でいいさ」
憂木は少し申し訳なさげに肩を竦めると、再び口を開いた。
「……通用、しますかね」
「早坂流が、か?」
憂木は相槌を打つ代わりに、夏目を見やった。
「するさ。喧嘩芸の看板は伊達じゃない。
後はどう、自分の中に組み込んでいくかだな」
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