序章

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   男は、己の成長を確かめるかのように、自身の体を眺め回していた。  袖を破ったTシャツから剥き出しとなっている、己の腕。  ガッチリと引き締まった木の幹の様な、己の太腿。  皮膚を引き裂かんばかりにパンプアッブした、己の胸。  太い骨格を包み込むそれぞれの筋肉が、緩やかな脂肪を纏うことで、男を男の身体として成している。  男はそれらを、やっと手に入れた宝物を愛でるかの様に、そっと撫でてゆく。  そして再び顔を上げると、真上からの陽の光を避けることもなく、ただ空を見つめていた。  その貌立ちは、精悍であった。  野性味を帯びながらも、大概の女性の心を捉えて離さない、不思議な魅力があった。  だが、男はそれには全くの無頓着であった。  彼の欲望は、強くなりたいという、その一点のみに絞られている。  強い男として、自分の名――憂木珪太――を、数多の格闘家の胸に刻み込んでやりたい。  それだけが、彼の欲望だった。    
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