序章

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   憂木はこの1年で、滅多に人を誉めたことがないボックをして、『エクセレントボーイ』と言わしめるまでに成長していた。  特にサブミッション(関節技)は目を見張るほどの習得ぶりであり、もはや街のリングで彼にかなう者はいなかった。  だが、彼の心が満ち足りることはない。  ひたすら、強さに貪欲であった。  鍛える。  喰らう。  考える。  眠る。  生きる。  それら全てが、憂木にとっては、ただ強くなるための手段でしかなかった。  そして――日課である午前のトレーニングをこなし、火照った身体を冷ましながら、ボックの関節を極めるまでの流れをシミュレーションしていた憂木の前に、その男は立っていた。
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