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アンティークな樫のテーブルセットに、二人の巨きな男たちが腰掛け、再会を喜びあいながら、談笑していた。
憂木はそれを、少し離れた丸椅子に座り憮然とした表情で、壁一面に飾られた若かりし頃のボックの写真を眺めながら、聞くともなしに聞いていた。
ボックにとって、かつての愛弟子であるその男は、大人びた笑みを浮かべながら、ボックの昔話に相槌を打っている。
高級そうなスーツにその巨躯を包み、組んだ両手をテーブルの上に投げ出したまま話に聞き入るその姿には貫禄が漂っており、憂木がボックから事ある毎に聞かされていた、グリーンボーイ時代の彼の姿は、想像し難いものがあった。
冴島晃。
憂木が入団する2ヶ月前にJWAを去ったレスラーだった。
191cm、110kgという恵まれた身体と、空手をベースとしたファイトスタイルで注目を浴び、将来のスター候補だった冴島は、ライバル団体であるWWWに突如移籍した。
いわく、引き抜きに数千万の金が動いた、とも仲間内では噂されていた。
移籍後の彼は、ほぼメインかセミファイナルに出場するという特別待遇を受け、実質的にトップクラスの扱いを受けている。
金で動き、約束されたスターの座に就く。本当の実力とは全く無縁に、するすると上り詰めたレスラー。憂木は冴島という男を、そう評価していた。
しかし、ボックとWWWの間に提携はおろか、一切の交流はない。それなのに何故今、冴島が姿を現したのか――。
「おい、憂木」
冴島の呼びかけに、憂木の不快感は一気に増した。なぜこの男は気安く、俺を呼び捨てにするのか。
自らの宝とも言うべき、ボックとの練習時間を邪魔されたことへの苛立ちもあり、憂木の不快さは増していた。
何だよ。憂木は声に出さず、視線を冴島に移し、その眼で応える。
冴島はふっとせせら笑うように、憂木の闘争心を受け流し、こう続けた。
「今日は俺がもんでやるか」
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