小人が見上げる空

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 そこはいわゆる工場だった。工場と言われるからには働く人々がいる。むしろ工場で働く事は、自らの種族の名前を象徴している様なものであり、いわば当然でもあった。  彼ら《工技人類(テラボット・ニューテクス)》にとっては。  労働者の中の一人で、周囲の者達よりも一段と目をギラつかせている者がいた。名前はスレット・イーハイト。これから彼が、いや工技人類が成すことを考えれば血眼になってしまうのは仕方のない事かもしれない。  スレットの工場における立場、役職は《第四都市工課役職所属・電波制御工技士長》である。工技士長と言う響きからは、なかなかの立場にいるように見えるが、少なくとも普段はそうではなかった。  無論、工技士長というものだけ見れば俗に言う「エリート」と見ても間違いない。ただスレットがエリートに当てはまらないのは、彼の専売特許が「電波」だからである。  そもそも工技人類はその名の通り、工業技術の発展・管理を全うする事を軸に置いた種族である。故に、工技人類各々が持つ技術がそのまま彼らのステータス、凄さになると言っても過言ではない。  彼らは生まれながらにして工業技術を覚え、それを生かす事が意義であり、在り方とされていた。
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