小人が見上げる空

7/14
前へ
/32ページ
次へ
『イーハイト工技士長、イーハイト工技士長、タイランさんがお見えになっています。至急ロビーまでお越しください。繰り返します、イーハイト工技士長――』  そんなスレットの物思いや仕事を遮るかの様に放送が入った。スレットは一瞬タイラン、ガーツ・タイラン氏が自分に会いに来た理由が分からなかったが、直ぐに思い出した。  ――そうか、今日は受け渡し日だったな。    ◇   ◆   ◇ 「おう、イーハイトさん。今日はいったいどうしたんですか?」  そう気さくに、いつもの調子で遥か上から響いてきた。 「いつもなら、私が来る前にロビーでいらっしゃるのに、今日はいないものだからビックリしましたよ」 「いやいやすいませんね。タイランさん、いつもご贔屓にして貰ってるのに、どうやら何か心配をかけてしまったようで」  と、スレットが首を上げて少し遠くに語りかけるように言う。 「あ、いや別にここにいなかったことは全っ然良いのです。ただ普段と違って、それも『受け渡し日』にいないものでしたからイーハイトさんに何かあったのではないかと思いまして」
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加