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『イーハイト工技士長、イーハイト工技士長、タイランさんがお見えになっています。至急ロビーまでお越しください。繰り返します、イーハイト工技士長――』
そんなスレットの物思いや仕事を遮るかの様に放送が入った。スレットは一瞬タイラン、ガーツ・タイラン氏が自分に会いに来た理由が分からなかったが、直ぐに思い出した。
――そうか、今日は受け渡し日だったな。
◇ ◆ ◇
「おう、イーハイトさん。今日はいったいどうしたんですか?」
そう気さくに、いつもの調子で遥か上から響いてきた。
「いつもなら、私が来る前にロビーでいらっしゃるのに、今日はいないものだからビックリしましたよ」
「いやいやすいませんね。タイランさん、いつもご贔屓にして貰ってるのに、どうやら何か心配をかけてしまったようで」
と、スレットが首を上げて少し遠くに語りかけるように言う。
「あ、いや別にここにいなかったことは全っ然良いのです。ただ普段と違って、それも『受け渡し日』にいないものでしたからイーハイトさんに何かあったのではないかと思いまして」
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