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「いや、特に何もありませんよ。ただ少し仕事が立て込んでまして」
言ってからスレットはハッとなった。仕事が立て込むなんて事は《電波制御》をしている自分には普通起こることではないのだ。これによって秘密裏に準備を進めてきた『革命』がバレてしまうのでは、と不安になる。その背中が一気に冷たくなるのが分かった。
「なあんだ、そうでしたか。あー、良かったあ」
そんな事を考えていたスレットであったが、心配が杞憂だった事はその声ですぐに悟った。
「いやホントすいませんね。一声連絡しておくべきだったのに僕ときたら――」
「だからもう良いんですよう。ほら、それよりも早く、本題の物を!」
本題の物、というのは《マイクロチップ》である。
まず、ガーツ・タイランは《総司人類》、即ち《巨人》だ。
それでいて、スレットにとっての多いとは言えないお得意様であった。特にタイランはスレットから見て、とても人柄が良く、なにより自分の「製品」をかなり評価して頻繁に買ってくれる大切な顧客でる。
その製品、マイクロチップは情報端末に入れると《PHウェーブ》と呼ばれる電波を発するプログラムがインストールされているものだ。
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