小人が見上げる空

8/14
前へ
/32ページ
次へ
「いや、特に何もありませんよ。ただ少し仕事が立て込んでまして」  言ってからスレットはハッとなった。仕事が立て込むなんて事は《電波制御》をしている自分には普通起こることではないのだ。これによって秘密裏に準備を進めてきた『革命』がバレてしまうのでは、と不安になる。その背中が一気に冷たくなるのが分かった。 「なあんだ、そうでしたか。あー、良かったあ」  そんな事を考えていたスレットであったが、心配が杞憂だった事はその声ですぐに悟った。 「いやホントすいませんね。一声連絡しておくべきだったのに僕ときたら――」 「だからもう良いんですよう。ほら、それよりも早く、本題の物を!」  本題の物、というのは《マイクロチップ》である。  まず、ガーツ・タイランは《総司人類》、即ち《巨人》だ。  それでいて、スレットにとっての多いとは言えないお得意様であった。特にタイランはスレットから見て、とても人柄が良く、なにより自分の「製品」をかなり評価して頻繁に買ってくれる大切な顧客でる。  その製品、マイクロチップは情報端末に入れると《PHウェーブ》と呼ばれる電波を発するプログラムがインストールされているものだ。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加