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部屋の中は少し薄暗い。彼の身長より大きい窓には厚いカーテンがかかっている。
彼はベッドの上で上半身を起こし少し伸びをする。そして、ベッドから出て窓の方へ歩き、窓の横にあるスイッチを入れる。カーテンが開き、眩い朝日が部屋の中に差し込んでくる。
彼は窓を開け、バルコニーへと出る。乾いた熱い風が部屋の中に入ってくるがそんな事は気にしない。
彼の目の前には王都バルティアの城下の町並みが見える。そして、その向こうには荒れ果てた大地、黄色に染まった荒れ地が広がっていた。遠くに所々緑色の森が見えるが、それもほんのわずかだ。
夢の中で出てきた、この星を旅だった者達。彼らがこの星を発ってからもう何百年も過ぎている。しかし、この星の現状はどうだろうか。あのときから何も変わっていないような気がする。むしろより悪化しているような。そんな気がしてならない。
というのも、この星に残された人々は6つの国に分かれた。ウルジット、ザラマトラ、エールクロン、ラクシュア、ウィツェレ、そして、バルディアの6つだ。そして、それらの国々はこの星に残された資源を巡り対立し、戦争も度々発生していた。
人間ってなんて愚かなのだろう。そんな事をしている場合では無いのに。
「ケネス様、こんな所にいらっしゃったのですか。朝食の準備ができました。」
メイド姿の女性が部屋の中からバルコニーを覗き、話しかけてくる。
ケネスと呼ばれた彼の名はケネス・アル・バルディア。このバルディア王国の王子だ。
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