迫り来る恐怖

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―翌日。 「ゲホッゲホッ!」 「大丈夫…大丈夫だから」 澪の体の中の悪魔が…一気に動き出した。 “もうお前には命がない”と言ってるかのように… 俺は必死に背中をさする 吐き気と咳と 左手と右足の麻痺に襲われる澪に なにもしてやれない自分が嫌で嫌でしょうがない 夕方 出掛けたあとにこっそり澪のいる病室をのぞく 澪は、紙を机に広げて… シャーペンをを右手で握ろうとする 右手は震えながらシャーペンを持って、 紙になにかを書いていた たまにペンが落ちるが、澪は眉間にシワをよせながら、 紙に必死に書いていた ・・・目尻に綺麗で透き通った涙を滲ませながら… 「もう…澪ちゃんの手は…」 それから…澪の両手は…まるで神経がないかのように 動かなくなった 足はたまに動くが、もう動かないと同じだった 澪は寝たきりになって、なにもしなくなった澪は… ただ窓の外を見つめるだけの生活が続いた 「ねぇお兄ちゃん…」 「…ん?」 「…あの花畑…最近行ってないね」 「そうだな…」 「…また…行きたいね…」 窓の外の 咲き始めた桜を見て、眉間にシワをよせる 「嘘。…忘れて?」 澪は切ない顔をしてうつむいた
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