最終章・妹

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澪は何度も転んでひざが赤くなっていた 花畑の中に入ったら倒れると花が一緒になって倒れてしまう その一生懸命な背中は、前よりも細く小さくなっていて、腕も足も細くなっていた やっと花畑を抜けた頃には澪は泥だらけになっていた 澪の肩を掴み、 桜の木に二人で寄っ掛かった 澪は俺の肩に頭を寄っ掛からせる 「綺麗だね…」 「そうだな…」 「最後に…見れてよかった…」 わかっていた事だけど言われると悲しかった 「そんな事言うなよ…」 「…」 澪は空を見上げる 空は快晴 雲ひとつない空にお袋の顔が浮かび上がる 「お兄ちゃん…」 「ん…?」 「私の事…好き?」 「え…?」 「妹じゃなくて…女として…好き?」 「・・・」 「私はね…好きだよお兄ちゃんの事 お兄ちゃんがお兄ちゃんじゃなかったら…彼氏にしたいくらい…」 「え…?」 「でも…やっぱり私は…お兄ちゃんはお兄ちゃんでいて欲し、い…」 澪の頬には、一筋の涙が伝う 澪は寄っ掛かっていた俺の肩から落ちて 俺は支えるように 抱き締めた 「澪…っ!」 「お兄ちゃん…心臓すごいバクバクいって、るね…」 「うるせぇ…っ」 「バクバクしすぎて…逆に止まりそう…っ」 のこりわずかの力で俺のTシャツを掴む。 「ねぇお兄ちゃん・・・ 私が妹で…幸せだった…?」 俺は小さな澪の体を腕で覆うように抱き締める 「あぁ…っ!幸せだったよ…!!」 「あはは…っ!良かったぁー…」 「なんでそんな別れの言葉みたいな事言うんだよ…っ!」 「だって…別れじゃない…っ」 「別れじゃねーよ…っ!だからそんな事言うなって…」 「…別れじゃないん…だよね?」 「あぁ…!!」 「きっと…また会えるよね? 私…ちゃんと…お兄ちゃんのところに行くからね…?」 「あぁ…待ってるよ…澪…っ」 「ありがとう…お兄ちゃん…」 そう言うと、澪は目を閉じた。体は全部力が抜けて掴んでいた手がだらんと落ちる 「澪…っ!澪…っ!澪っ!!」 俺の涙が澪の髪の毛を濡らす 「…ぁぁぁぁああああっ!!!」
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