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床に倒れ込んだまま情けなく泣いている亮の横には、同じく同僚の小杉優里(コスギ ユリ)がいた。
鎖骨まである黒髪のセミロング。枝毛一つない綺麗に手入れされた艶やかな髪は緩く巻かれている。マスカラとブラウンアイシャドー、グロスだけの薄化粧。淡いピンクのシャツに灰色のプリーツスカートを着用している。首にはハートのネックレスを着けていて、着ている服の胸元は、Fカップはありそうな程の豊かな胸を強調している。
女の子らしい雰囲気と抜群の容姿で会社では“天使ちゃん”と呼ばれ、アイドル的な存在。
そんな彼女は手に三本の缶コーヒーを持っていて、一つを亮に、もう一つを俺にくれた。
「あ、小杉さん……ありがとう」
一応、控え目にお礼を言う。
「咲夜くん、そのコーヒー好きなんだよね? 私もね、それ大好きなんだ」
照れくさそうに頬を赤らめ、優里は可愛らしくニッコリと笑った。ーーふと、無機質な灰色のコンクリートに掛けられた時計を見ると、針は深夜2時を差している。急いでデスクの上に置かれた荷物を鞄に入れていると、スーツの裾を引っ張られる。
「咲夜くん、もう帰っちゃうの?」
優里は上目遣いで目に涙を溜めて俺を凝視した。
「ああ。もうこんな時間だし、明日は休みだから今日は帰るよ。小杉さんも早く帰りなよ?」
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