第七章 善は悪へ

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『さあ今年も始まりました! 春華魔法高等学校主催、学内模擬魔法戦闘大会……第二回戦! 二回戦目からは放送部員による実況と解説をお送りしたいと思います』  この実況を聞くのもこれで何回目だろうか? あくびが出る。まるで音楽リピート再生にして延々と聞き続けるような感覚だ。  もう実況者が何を言ってるとかなんてのもどうでもいい。興味すら沸かない。 「試合開始!」  そして気付けば天井に掲げられた手が下げられると共に、田村先生による試合開始の合図が魔法訓練ドーム内に響いていた。 「え? ……ぅ………うぇ!」  そしてそれと同時に……上空へと吹っ飛ぶムイ。  何回前だったか? ムイと対戦した時俺は試合開始の合図と共に上空へと吹っ飛ばされた。  だから今回は逆に俺がムイを上空に吹っ飛ばしてやった……風属性の魔法で強化した拳で。  ちなみに俺がさっきまでいた場所にはムイが仕掛けていた風属性の魔法が上空に向かって吹き荒れている。 「お……おいあいつ、今何やったんだ!?」  突然の事に観覧席にいる他の生徒達がざわつきだす。  驚くのも無理ないだろう。俺は今試合開始の合図と共にムイの背後に一瞬で移動したのだから。  俺は今までのループで何もせず黙って過ごしていた訳じゃない。茂から教えを受けたレールガンを、かなり実用性の高い段階にまで磨き上げたのだ。  つまり…… 『おおっと!? どういう事だ!? Fクラスのムイ=ミフィールさんがAクラスの生徒に手も足も出ていません!』  ムイがスキルを使って魔法を放つよりも先手を討つ事が出来る。それもレールガンは茂の使う瞬動とは違い、空中間も一瞬で移動できるため応用幅が広い。 「ぇう! あ! うぁ! っくぅ! …………ぁぁああ!」  だから俺はムイを殴って吹っ飛ばしては追いかけるのを繰り返し、地面に倒れる暇も与える事無くダメージを与え続けた。  魔法障壁や防御魔法を使っているといえど間髪入れずに何度も攻撃を喰らえば相当なダメージのはずだ。もっとも……早く倒れてくれないとレールガンは魔力の消費が激しいので魔力が尽きてしまうのだが。
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