第七章 善は悪へ

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 全力で来いと言ったのはムイだ。それにこいつには一度味わせてやらないと気がすまない敗北の味を。  手も足も出せず、只今まで培ってきた心の支えを折られる絶望を……お前も味わえ。 「くそ……負けるもんかぁぁぁあ!」  俺に攻撃を受けている途中、ムイはそう叫び、歯を食いしばって手元から巨大な炎の塊を俺へ向けて放出させた。 「……当たる訳ないだろ」  だが速度で圧倒的に上回る俺に当たる訳が無く、右へとシフト移動して簡単に回避する。 「もらったぁぁぁ!」  炎の塊を回避した直後ムイがそう叫び、俺の背後から同じく巨大な炎の塊が接近する。  だが、俺はその炎の塊が来るのを既に……把握していた。 「な……嘘だろ!? 今確かに当たったはずじゃ……!」 「インビジブルマジックって魔法だ」 「……っ!」  俺はムイによる二度の攻撃魔法を回避した後、耳元で俺が何の魔法を使ったかを囁き、地へと向けてムイを思いっきり殴り落とした。  地面へと衝突したムイは遂に立つ力を失ったのかそのまま横たわり、ぐったりとした表情で肩で息をしながら動かなくなった。 「しょ……勝負あり! 続行不能とみなし勝者を三年Aクラス代表ゼラス=フィドルとする」  魔法訓練ドーム内があまりにも一瞬かつ圧倒的な出来事に静まりかえった。無理もないだろう。多分今の俺の力は学生のレベルを超えている。  それだけの時間を俺は繰り返して生きてきたという事だ。無論俺はレールガンを使いこなす特訓だけをして来た訳じゃない。  他にも使える魔法が無いか……茂に教えを請いながら使用できる魔法の数をひたすら増やしてきたのだ。  さっき使ったインビジブルマジックもその一つ、言ってしまえば残像を故意に作る魔法だ。残像が消えるまでの間自分の体を透明化させ、相手が視認出来ないようにする光魔法。  光魔法だから最初習得出来ないかと思ったが、茂自身が光魔法の使い手だったのが幸いした。おかげでこの通りだ。  それと……ムイの放った背後からの攻撃を回避出来たのは……別に今までループした中で同じ行動があったという訳ではない、純粋に予知したのだ。  つまり……未来予知。
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