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朝、定時刻に起床したあずまは、違和感に首を傾げた。
何だか自分の体が変わったような、奇妙な感覚。
ベットから起き上がり、スタンドミラーの前に移動して自分の姿を確認したあずまは、思わず叫び声をあげそうになった。
「っ~!?」
喉まで出かかった悲鳴を飲み込んで、鏡に映った自分の姿をまじまじと見つめる。
それから、恐る恐る自分の体に触れる。
程よく押し出された胸、けぶるような長い睫毛、艶やかに色づいた唇。
女性そのもののそれらを確認し、あずまは今度こそ悲鳴をあげた。
「ぎゃぁああぁぁあぁぁぁ!?」
「どうかなさいましたか、あずま様!?」
あずまの悲鳴を聞きつけ、部屋に飛び込んできたのは傍付であるセレだった。
「あぁ、セレ。ちょっと今俺もよく分からない事態に・・っ!?」
セレの姿を見て、固まる。
いつも身に着けているYシャツの胸元は、ゆったりとした曲線を描きその胸の膨らみを表している。
「セ、セレ…む、胸が・・」
思わず指差すあずまにセレが不思議そうに首を傾げる。
「胸が何か?それより、王女として『俺』という言葉使いはどうかと思いますよ。」
あずまの無事を確認したセレが、安堵しながら少し眉を寄せ咎める。
「は!?王女?誰が!?」
「あずま様以外に誰がいるというのです。朝食のお時間ですよ、早く着替えていらして下さいね?」
そういって部屋を出ていったセレを呆然と見送ったあずまは、困惑しながらも洋服ダンスを開けた。
「・・・なんじゃこりゃ。」
洋服を見てあずまは呟いた。
元々ファッションにそこまでのこだわりはなかった。なかったけれど、さすがにこんなひらひらしたフリルのついた服は買っていないはずだ。
しかも、何着もなんて。
洋服を掻き分けて、いつも自分が着ている服を探す。
ない。一着も。
仕方なく一番フリルの少ないシンプルな服を身につけ、あずまはダイニングへ向かった。
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