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ダイニングの扉を開けて、あずまは絶句した。
「あ、おはよう、あずまっ。」
元気よく自分に手をふるムサシ、新聞に目を通しながらコーヒーを啜るバット。いつもと変わらぬ仕草だけれど。
明らかに、体型も骨格も・・というか性別が違う。
急いで視線を巡らせる。
ムサシやバットだけでなく…元光も、レオンも美少女となっている。
「どうした、落ち着きがないな。」
「あずまお兄ちゃん、どうかしたの?」
元から可愛らしいレオンは勿論、いつもは生意気なだけの元光も、女子の姿だと何だか愛らしく見える。
「どうしたあずま坊ちゃん?ぼけっとして。」
その言葉にあずまはキッチンに視線を投じた。
朝食作りを手伝っているらしい天翔の姿に、瞬きをする。
精悍で男前な顔立ちをしていたはずの天翔も、美女へと姿を変えていた。
仕草までは変わっておらずぼりぼりと気だるげに頭をかく仕草も普段と変わらない。
・・・変わらないのだが、普段の男の色気とは違って女性特有の色気がだだ漏れなのはどういうことだ。
服装もいつも通りだらしなくスーツを着崩しているが、緩んだネクタイとボタンを外したシャツから覗く豊満な胸に却って目のやり場に困る。
一番男らしいはずの天翔までも変貌していることに、内心天翔は普通のままだろうと期待していたあずまは口を開けた。
あんぐりと口を開けて棒立ちしているあずまに、後ろから走ってきた誰かがあずまの肩を押す。
「入り口で突っ立ってないでよ、あずま。セレさん、遅れてごめんなさいっ。ちょっと新薬の研究してて。」
その声に後ろを振り向き、あずまはその姿を凝視した。
「・・・・エリー…か?」
「? 当たり前だろ、朝から寝ぼけてるのあずま?」
あずまの問いに、美麗な顔立ちの青年――エリーが眉をしかめる。
「うそ、だろ・・・。」
信じない、というより信じたくない。
・・・全員の性別が逆になっているなんて。
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