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「何が?」
きょとんとするエリーから思わず後ずさりながら、あずまは冷や汗を流して叫んだ。
「全員で、俺をからかってるんだろ!?そうって言ってくれ!」
「さっきから、何を言っている・・?」
クールな美女へと姿を変えたバットが、眉をよせてあずまを見つめる。
女性の姿のせいか、眉をよせる仕草だけで色香が匂い立つようだ。
「バットまで、こんな悪ふざけに付き合うなよ。お前こういう悪ノリ普段乗らないくせに、どうしたんだ?」
引き攣った笑みを浮かべて問うあずまに、バットはさらに眉間の皺を増やした。
「だから、何を言っている?訳が分からん。」
「だから、何で女の格好なんかしてるんだ!俺も、ムサシも、バットも、セレも元光もレオンも皆男で、エリーは女のはずだろ!?」
あずまの叫びに全員が目を丸くする。
「は・・?何言ってる、逆だろ?」
エリーが訝しげにあずまを見る。
他の者も、あずまの言った事に眉をひそめている。
「あずま様、どうなされたのです、何だか今日は様子がおかしいですよ?体調でも優れないので・・?」
心配そうにあずまを覗き込むセレに、あずまは渋面を作った。
「俺は普通だ。おかしいのは、お前だろ!」
怒鳴るような言い方に、セレは目を見開いたかと思うとその後小さく唇を震わせた。
「な、何で怒るのですか。私はご心配しただけで・・。」
目に涙をいっぱいに溜めて言うセレにあずまは硬直した。
「あー!あずま、泣かした!」
ムサシの言葉にたじろぐ。
いつもは子どもっぽいだけのムサシの台詞も、今はクラスの女子を泣かせた男子のことを責める女生徒のようだ。
泣かした相手はセレとはいえ、今はか弱い女性の姿なわけで。
目の前で涙ぐみながら小さく震えるその姿に、良心が抉られるかのような痛みを覚える。
「あずま、いきなり心配してくれたセレさん怒鳴るなんてひどいよ。」
エリーにまで責められ、良心がずたずたに引き裂かれる。
精神的な攻撃に耐え切れず、目を瞑って耳を押さえて叫ぶ。
「もうやめろ、やめてくれぇぇぇぇぇっ!」
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