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「着いたぞ。ここだ」
到着したのは、駅前にそびえ立つ15階建てのマンション。多分この辺ではなかなかにお高い家賃のはずだ。
調べたわけではないが、そんな気がする。
側の駐車場に車を止めると、コンビニ袋を1つずつ持って、建物に向かって歩き出す。
そしてマンションに入り、エレベーターに乗って、7階へ。
そして通路を端っこまで歩いて、お姉さんはお尻のポケットから、キーケースを取り出す。
表札に何も書かれていない。
「ここが私の部屋だ。入れ」
カギを開けて、お姉さんは部屋の中に俺を入れる。
玄関周りはきれいに整頓されており、女性もののおしゃれな靴やミュールがいくつも並んでいる。
俺は場違いとも言える安物スニーカーを脱いで、なるべく邪魔にならないところに置く。
「そんなに気を使うな。今日からここはお前の部屋みたいなものだぞ」
「えっ?」
俺はその言葉に同様しつつも、お姉さんに着いていく形で、リビングの方へと向かう。
「とりあえず、そこに座れ」
大きいリビングだ。うちの実家より遥かに広い。最新型の薄型テレビに、軽く5人は寛げそうなくらいの赤色の大きなソファーがある。
とりあえず、命令された通り、赤色のソファーの端に座ると、お姉さんはなんとわざわざその横に腰を下ろした。
そして手にしていた乾きもののおつまみが盛られたお皿と缶ビールを2本、テーブルに置く。
同時に、ふわっとした甘い香りが俺の鼻に届いた。
「お前、酒は強いか?」
お姉さん缶ビールを開けながらそう訊ねる。
「いや、全然。ちょっと飲んだだけですぐ顔が赤くなるくらい」
「それじゃあ、あたしと一緒だな」
お姉さんはそう言って、俺に缶ビールを手渡す。
「乾杯だ」
「か、乾杯」
ゴツッと缶をぶつけあって、俺達はごくごくとビールを体に流し込んだ。
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