◇ハジマリノヒ◇(プロローグ)

2/12
987人が本棚に入れています
本棚に追加
/291ページ
それは、 季節はずれの雪が舞う、 春の初めのある日―― 「うわっ、さむぅ~」 私、結城早紀(ユウキ サキ)は、 いつもの通学路で突然吹いた風に、 首をちぢめた。 高校2年の、 始業式の帰り。 昼前には学校は 終わっていたけど、 つい友だちとおしゃべりをして、 もう夕方近い。 鼻の頭に、 つめたいものが当たる。 空を見上げて驚いた。 「ウッソ、雪ぃ…?」 近くを歩いていた知らない女の子が、 感激しながら ケータイにしゃべりかけている。 「すごーい! あのね、雪と桜がいっしょに散ってるんだよー!」 うちの県では、たまに、 春でもとても寒くなることがある。 それでも、 こんな景色は めったに見られない。 私も感動していた。 「そうだ。いまなら…」
/291ページ

最初のコメントを投稿しよう!